2019年11月8日金曜日

京都国立近代美術館「円山応挙から近代京都画壇へ」前期を観て

上記展覧会の待望の京都展が始まり、早速行って来ました。

円山応挙から始まる、円山・四条派に連なる近代の京都画壇は、私たちの属する
京都の和装業界とも、深いつながりがあります。というのは、かつて京呉服の主力
商品であった友禅染の着物の図案、下絵などを、京都画壇の画家の卵や若手画家
たちが担って来たからです。

それで今展の会場に入り、展示されている作品を観て回った時にも、私はまず、親し
いものに出会ったような何とはなしの安心感と、懐かしさを感じました。

さて本展のメイン企画である、応挙と弟子たちによる大乗寺の重要文化財の襖絵の
立体展示が、会場に入ってすぐのところで、私たちを迎えてくれます。この展示は、
襖絵8面を寺院での実際の配置を再現して並べてあって、正に現地にいて作品を目
の当たりにするような臨場感を、私たちに与えます。

勿論、この襖絵は素晴らしいものですが、私は今回特に、立体展示によって強調され
た、《松に孔雀図》と《山水図》に顕著に見られる、襖面の90度の配置を有効に活用
した、画面全体に立体的な奥行きや広がりを持たせる巧みな表現に、注目しました。

このような表現方法は、私の知る限り、恐らくそれ以前の狩野派の障壁画などには
見られなかったもので、今回この展示方法によってそれを実感することが出来たことを、
嬉しく感じました。

また、応挙の生み出したであろうこのような立体的な表現方法が、後の京都画壇に
少なからぬ影響を与えた証が、岸竹堂《大津唐崎図》、木島櫻谷《山水図》、菊池芳文
《小雨ふる吉野》などの雄大な風景描写に端的に現れていて、絵画精神の継承という
ものを直に感じることが出来たことも、意義深く思いました。

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