2019年11月22日金曜日

鷲田清一「折々のことば」1637を読んで

2019年11月12日付け朝日新聞朝刊、鷲田清一「折々のことば」1637では
詩人長田弘の詩「ゆっくりと老いてゆく」(詩集『世界はうつくしいと』所収)から、次の
ことばが取り上げられています。

  砂漠で孤独なのは、人間だけだ。

これは、意表を突く視点。私たちはすぐに、砂漠というと、存在を拒まれるような過酷
な環境、そしてもしその場所に一人取り残されたとすれば、絶望と激しい孤独に見舞
われるという風に、砂漠を自分に引きつけたイメージで捉えがちです。

でも砂漠にも生き物がいて、彼らはそこで環境に適応しながら懸命に生きている。
そんな彼らにとって、砂漠は孤独を感じさせるような場所ではなくて、ある時は恩恵を
与えてくれる場であり、ある時は自らの命を守るために、試練に耐えなければならない
場なのでしょう。

上記のことばを目にして、そのことに思い至ることがまず最初の驚き。しかし、ここで
いう「砂漠」を比喩的なものだと考えたら、更にイメージは広がります。

つまりこの場合の「砂漠」を、単に地域や自然環境としての砂漠ではなく、人間が過酷
な条件や場所と感じる状況の比喩と捉えたら、我々が生きて行く上での多くの場面に、
当てはまることになるでしょう。

私たちが人生の中で、もし過酷な試練や逆境に直面した時、そこに自分が拒否される
孤独や絶望だけを一面的に感じ取るのではなく、もう少し自分を突き放して、冷静な
立場から自らの置かれた状況を見ることが出来れば、今までとは違う感じ方や、そこ
から抜け出す方法が、体得出来るかもしれません。

そう考えると上記のことばは、私たちを励ましてくれている、のかも知れません。

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