2019年11月13日水曜日

細見美術館「琳派展21 没後200年 中村芳忠」を観て

京都国立近代美術館にも近い細見美術館で、上記の展覧会を見て来ました。

先日感想を書いた、「円山応挙から近代京都画壇へ」前期を観たばかりなので、応挙
と同時代を生きた芳忠に親和感を覚えるとともに、両者の絵を比較して、芳忠の絵の
柔らかさ、自由さ、俳味に、新鮮なものを感じました。

会場に入ってすぐの、第1章「芳忠の琳派ーたっぷり、「たらし込み」ー」を観ると、芳忠
が琳派の影響を受けて、絵具や墨のにじみの効果を利用する「たらし込み」の技法を
用いて描いた画が展示されていますが、従来の琳派の作品と比べてもこの技法を
部分的ではなく、徹底していると思われるほどに多用して、作品を仕上げています。

その結果、全体がぼんやりしているような柔らかさや伸びやかさが滲み出て、えも言わ
れない、ほのぼのとした気分を観る者に喚起させる、画となっています。この雰囲気こそ、
彼の作品全体に通じる魅力であると、私は感じました。またこのパートの特色は、扇面
に描いて屏風等に貼り付けた作品が多いこと。小ぶりな扇面に描いて、それを組み
合わせて一つの作品に仕上げることによって、さらに作者の表現の自由度が増して
いるように、感じられます。

第2章「大阪と芳忠ー楽しみながら、おもしろくー」と第3章「芳忠と俳諧ーゆるくて、ほの
ぼのー」は、彼が京都で生まれ、主に大坂で文人、俳人と交わり活動する中で、生まれ
た作品で、正に彼の魅力を遺憾なく発揮する、真骨頂を思わせます。文人画的な素朴
で地味溢れる伸びやかな作品、俳句とコラボレートした俳味の横溢する作品は、当時の
文人、俳人たちの忌憚ない交友を彷彿とさせるとともに、江戸期の良き文化の香りを
感じさせてくれます。

ここで更に私が興味を惹かれたのは、第3章の俳画の描き手の名前に松村月渓が見
られ、俳句の作者の名前に与謝野蕪村が見い出されたこと。月渓は呉春であり、彼は
蕪村に絵を学んだ後応挙に師事したということで、一挙に芳忠と円山・四条派の地域的
にも浅からぬ関係が明らかになり、その頃の上方の文化の活況を見る思いがしました。

二つの展覧会を同時期に観ることによって、江戸後期の京都、大坂の文化状況を
重層的に学ぶことが出来たと、感じました。

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