2019年11月27日水曜日

高台寺絵画特別展「マリオ・デル=モナコの世界、ルカ・ガリレオの世界」を観て

紅葉が盛りの高台寺で、上記の展覧会を観て来ました。

一見、高台寺とこの展覧会は、結び付かないように感じられますが、同寺は京都市
の姉妹都市であるフィレンツェ市と深い交流があり、同寺でクラッシックコンサートを
催して来た、ソプラノ歌手で日本イタリア協会理事長の中川くにこさんの協力で、
今回、フィレンツェ出身の高名なテノール歌手であったデル=モナコの油彩画5点の
展示と、中川さんの夫の著名なバイオリニストで、画家としても活躍するガリレオさん
が制作し、同寺に奉納した、襖絵12枚の公開が実現することになった、ということ
です。

デル=モナコの油彩画は、ナス、カボチャ、桃など、野菜や果物を描いた静物画で、
彼は音楽の傍ら美術学校で絵画や彫刻を学び、オペラ引退後は個展開催など
美術でも才能を発揮したということで、私は彼が絵も描いたことを全く知りませんで
したが、淡い彩色の背景から浮かび上がる静物たちは、あくまで柔らかく、繊細で、
観る者を落ち着かせる優しさに満ちています。どれも完成度の高い絵画だと、感じ
ました。

他方ガリレオさんの襖絵は、音楽と絵画の融合を図る前衛的な試みで、バイオリン
の名器ストラディバリウスの音から感受される、原始のエネルギーが渦巻き、変動
する姿を、全て黄金色の油彩絵具で写し取った、抽象的な作品です。

全体が眩いばかりの光彩を放つ作品ですが、黄金色の底に、えも言えない重厚さ
を湛えた落ち着きがあり、設置されている同寺の仏殿「方丈」の古い木造建築の
建物と、不思議な均衡を保って調和しています。その佇まいから、東西の文化の
融合ということを、感じさせられました。またこの寺が、豊臣秀吉の菩提を弔う目的
で建立されたこともあって、秀吉の黄金の茶室のイメージも想起されました。

境内の紅葉は正に見ごろで、久々に訪れてこの寺の美しさを改めて満喫しました。
秀吉とその正室北政所(ねね)を祀る霊屋の、有名な高台寺蒔絵も見ごたえがあり、
他にも見どころが色々あって、充実した時を過ごすことが出来ました。

1 件のコメント:

  1. 私は第三次イタリアオペラ団が来日してからのMario del Monacoの大ファンです。残念ながら第二次のOtello 初演の時は8歳で知る由もありませんでしたが、第三次の時はテレビ生中継のお陰で彼の素晴らしいRadames, Pagliacci, Andrea Chenierを見ることができました。やはりOtelloを見たかった❣彼が絵画や彫刻の勉強をしていることも知っていました。
    1963年来日時には絵画展も予定されていたとか。残念でなりません。彼が自動車事故後瀕死の状態から不死鳥のごとく復活したことも知りました。子育ても終わり、教員生活も定年退職し私もいい年になりました。彼の歌に再び恋をしています.いつも彼が描いた作品を見たいと思っていました。描いている様子はYouTube で見たことがありますが実際の絵は見たことがありません。彼が描く静物画、見に行かれた方が優しさに溢れていると仰っていました。是非見たいのですが手段はありますか?
    彼の家に飾られているOtello などの自画像は彼の作品なのでしょうか?
    舞台からは引退しても前向きな生き方に感動しています!!!!
    晩年の渋くて美しいMrio del Monacoに万歳❕❕

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