2015年7月29日水曜日

漱石「それから」の中の、結婚話を契機に、初めて自分の将来に向き合う代助

2015年7月29日付け朝日新聞朝刊、夏目漱石「それから」106年ぶり連載
(第八十三回)に、見合い話を断ろうと実家に赴いた代助が、見合いの
推進派の兄嫁と交わす次の会話が記されています。

 「すると梅子は忽ち、
 「何ですって」と切り込むようにいった。代助の眼が、その調子に驚いて、
ふと自分の方に視線を移した時、
 「だから、貴方が奥さんを御貰いなすったら、始終宅にばかりいて、たんと
可愛がって御上げなさいな」といった。代助は始めて相手が梅子であって、
自分が平生の代助でなかった事を自覚した。それでなるべく不断の調子を
出そうと力めた。」

折しもの結婚話を契機に、代助は自分が三千代を愛していることに気が
付きます。しかし彼女は、かつての親友平岡の妻です。でも平岡は今や、
彼女に相応しい夫ではない。では、どうすべきか?代助は、思い悩みます。

この見合いに乗って、悩みから逃げることも考えますが、彼はその点
生真面目で、自らの意志に背く結婚がこの問題の解決にはならないと、
思い至ります。

折々適当な理由を付けて、これまでの人生をやり過ごして来た代助に
とって、今回の問題では初めて、自分自身と真剣に向き合うことを求め
られたのでしょう。

この場面での代助と兄嫁の会話は、その事実を示しているのだと、感じ
ました。

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