2015年5月5日火曜日

京都市美術館「PARASOPHIA:京都国際現代美術祭2015」を観て

京都初の国際現代美術祭、PARASOPHIAが市内8か所を会場として開催
されています。その祝祭気分の一端を味わってみたいと、メイン会場の
京都市美術館に向かいました。

まず気付かされたのは、この美術館の場合通常の美術展では、館内の
一部の区画が限定されて会場として使用されているのに、本展では、一階、
二階はもちろん、一部地階、エントランスに至るまで会場になって、
バラエティー富む作家の作品がゆったりと展示され、祭りに相応しい
華やかさを醸し出していることです。

しかも展示のテーマの一つには、「美術館の誕生」というこの美術館
そのものの歴史を跡付ける企画もあって、言わば会場そのものが展示物と
いう重層的な構成になっています。それゆえに観る者は、この
京都市美術館という普段慣れ親しんだ建物の良さ、有り様を再発見する
ことにもなるのです。

さて本展の展示の中で、一番私の印象に残ったのは蔡國強のコーナーです。
北京オリンピック開会式の花火の演出などで有名な蔡の展示は、一階正面
入り口から入ってすぐの中央の広いスペースにあり、会場の真ん中には
竹材を使って六角形七段に組み上げられた塔(パコタ)が聳えています。

この塔は、平安京が都市計画策定においてモデルにした、長安の大雁塔を
イメージしているといいますが、無論竹組の素朴で簡素な作りゆえに、
威圧感はみじんもありません。しかもパコタの竹材には、派生プロジェクト
「子供ダ・ヴィンチ」で、地元の子供たちが身の回りにある材料で自由に制作
した作品が飾られ、いかにも軽やかで華やいだ雰囲気を演出しています。

その塔の周辺には、中国各地の農民が日常の身近な素材で自作した、
「農民ダ・ヴィンチ」のプロジェクトのユーモラスなロボットなどが展示されて
います。

また私が特に感銘を受けたのは、蔡がブラジルの貧困地域の子供たちと
一緒に凧を制作し、揚げて遊ぶ様子を記録した映像で、子供たちの瞳の
輝きと蔡の屈託ない笑顔に、ものを作り用いることへの純粋な喜びが溢れて
います。

展示全体から発散される和やかな気分に、この世に生き続けることへの
希望をもらう思いがしました。

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