2019年2月17日日曜日

京都国立博物館「中国近代絵画の巨匠 斉白石」を観て

日中平和友好条約締結40周年を記念して、中国・北京画院が所蔵する、中国近代
水墨画を代表する画家である斉白石の作品を展示する展覧会です。同博物館の
平成知新館2階で開催されています。

斉白石のことは、これまで全く知りませんでした。というよりも、今まで中国の近代絵画
一般に触れたことがなかったと、思います。それで本展で、初めての地域、時代の絵画
を鑑賞をすることがすごく楽しみで、期待感を持って会場に向かいました。

まず第1室花木のコーナーを一巡すると、日本の近代の水墨画とは、受ける印象が微妙
に違うことに気づきます。それがどこから来ているのか考えてみると、タッチや色使いの
ニュアンスが少し異なっているのではないかと、思い当たりました。

勿論、斉白石の作品だけを観て、日本の水墨画全般から受ける印象と比較するのは、
無謀なことには違いありませんが、そこに水墨画における日本的な感性と中国的なそれ
との差異のようなものを感じたので、このようなことを記すことにしました。

つまり同じような画題を扱っても、日本の水墨画では筆運びや墨の濃淡などに柔らかさ
が勝り、結果として優美さや湿潤な感じがにじみ出て来るのに対して、斉の画では形象
の潔い捉え方、墨のはっきりとした濃淡、墨以外の色とのコントラストの鮮やかさから、
力強さや純朴さ、確固とした存在感のようなものが浮き出て来るように感じられたのです。

このような差異に、私は国民性による美意識の違いのようなものを感じました。しかし
最初こそ、従来の価値観とは違う絵画を観るような若干の抵抗を感じたものの、次第に
彼の絵画の魅力に気づくことが出来て、その作品世界に引き込まれて行きました。

その魅力の源泉は、この画家の人間性からにじみ出るに違いない作品の品格で、鳥獣画
に見られるユーモラスさ、可愛らしさ、昆虫の精緻な描写からうかがえる小さな生き物に
対する優しさなどが生み出す温もりは、他に代えられないものであり、雄大な風景から
小さな生き物に至るまで、いかなる対象を扱っても、その作品が醸し出す詩情は稀有な
ものであると、感じました。

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