2019年2月15日金曜日

鷲田清一「折々のことば」1369を読んで

2019年2月7日付け朝日新聞朝刊、鷲田清一「折々のことば」1369では
名優樹木希林の『一切なりゆき』から、次のことばが取り上げられています。

  口をぬぐって、”ない„ことにしなくてよかった。

誰にも過ちや失態、人を深く傷つけた経験など、消し去ってしまいたい過去の記憶が
ある。でも齢を重ねるとそれすらとても「懐かしい」と、女優は記します。

確かに若い時には私も、人を傷つけないことが自分の言動において注意すべきこと
として大きな比重を占め、そのために肩身の狭いような、あるいは委縮したような
態度で人に接していたことがあったように思います。

でもそのような挙動はかえって相手を気詰まりにさせますし、こちら側も言うべきこと
を十分に伝えることが出来ず、結果としてコミュニケーション不全に陥ることになり
ます。

このような私が、目の前で相対する人にある程度落ち着いて自分の思いを伝え、また
相手の意見も聞く余裕が出来たと感じられるようになったのは、一体いつ頃からだった
でしょうか?

その時期はもう定かではありませんが、どんなに取り繕うよりも、ただありのままの
自分を相手にさらけ出すしかないことを悟り、人に話を聞いてもらう時には、自分が
相手の話を聞く時に分かりやすいと感じられるように話す、ということを心がけるように
なってからだと、思います。

そのような思いに至ったのは、数多くの失言や失態という苦い経験を積み、その事態
を忘れるのではなく、生きて行く糧とすることが出来たからかも知れません。

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