2017年12月10日日曜日

美術館「えき」KYOTO 「これぞ暁斎!世界が認めたその画力」を観て

幕末から明治にかけて活躍した絵師、河鍋暁斎の本格的な展覧会です。

暁斎の作品は幾度か美術雑誌で見たことがありますが、何か戯画、きわ物を描く画家
というイメージを持って来ました。本展では、作品を網羅的に紹介するということで、
その画業の全容を知ることが出来たらと考えて、会場に足を運びました。

まず本展出品作は全てイギリス在住のイスラエル・ゴールドマン氏のコレクションで、
その充実した内容から江戸期の浮世絵など日本絵画が、明治以降国内よりまず
海外で評価されたという事実の流れを汲み、暁斎の作品も真っ先に外国人を魅了した
ことが、見て取れます。

これは江戸から明治に移る社会の動乱や、西洋的な価値観の一気の流入による
人々の美意識の混乱に与るところが大きいと思われますが、海外で見出され国内で
再評価されるという図式は、国際交流が活発になった時代の新たな美的価値観の
創出として、大変面白く感じられました。

本展を一通り観てまず暁斎の画業の多様さ、次から次へと作品を生み出す
バイタリティーに驚かされます。肉筆画、版画、絵日記というに止まらず、日本絵画
から水墨画、大判錦絵から版本まで、画題も神仏、妖怪、人物、動物、歴史物、春画と
多岐に渡り、その表現方法も正統な絵画から洒脱な水墨表現、戯画的なものまで、
全てが暁斎の絵画であり、特異な魅力を放っているのです。

その魅力の秘密を私なりに読み解いてみると、まず種々の技法による表現を可能に
する技量の確かさが挙げられます。暁斎は7歳で浮世絵師の歌川国芳に入門した後
狩野派の絵師にも学び、弱冠19歳で修業を終えたといいます。早熟の天才であり、
人並み以上の研鑽も積んだのでしょう。

また生きた時代の激動に決して流されることはありませんが、その変化に対して敏感
であったことも見逃せないと思います。なぜならその変化の速度を超越するエネルギー
で、絵画制作に没頭したと推察されるからです。

さらには、暁斎の滑稽な作品には前面に出て来るユーモアと諧謔が、その魅力として
挙げられます。そういう種類の作品は一見して楽しいですが、しかし正統な作品に
おいても、そのような要素は隠し味になっていると感じられるのです。

今回観た作品の中で私は個人的には、124「幽霊図」と「百鬼夜行図屏風」が印象に
残りました。                          7月15日記

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