国立国際美術館で、「ウィーン・モダン クリムト、シーレ世紀末への道」を観て来ま
した。
クリムトやシーレの魅力的な作品も展示されていますが、全体の構成としては、
19世紀末から20世紀初頭における絢爛たる総合的芸術の開花に至るまでの、18
世紀からのウィーン発展の歴史と経緯をたどる展覧会です。
それ故に絵画を初め、工芸、服飾、建築デザイン、印刷物と、多様なジャンルの
多数の作品が会場を彩り、さながら芸術の都ウィーンの見本市のような、華やいだ
気分を醸し出しています。
個別の作品で印象に残ったものを数点挙げてみると、まず「作曲家ヴォルフガング・
アマデウス・モーツァルト」の肖像並びに、「ウィーンのフリーメイソンのロッジ」に描か
れている当人の姿です。ウィーンは音楽の都でもあり、彼以降の著名な作曲家、
シューベルト、ヨハン・シュトラウス、マーラーなどは、直ぐにこの都市と結び付きます
が、モーツァルは私にとって、最早伝説的存在のような先入観があり、彼がこの都市
で実際に暮らし、啓蒙的な空気の中で音楽活動をしたという事実には、彼との距離
が一気に近づくような親近感を覚えました。
次にナポレオン率いるフランスとの戦乱後、内向きな気分に支配されるようになった、
ビーターマイアー時代のウィーンの画家ヴァルトミュラーの絵画「バラの季節」。後の
印象派の時代の到来を予感させるような、戸外の光の輝きと共に自然に包まれる
ことの幸福を、全身に感じさせてくれるような、忘れがたい絵です。
最後にクリムトも点数は少なくとも良い作品がありましたが、シーレの「自画像」、
「美術批評家アルトゥール・レスラーの肖像」に、強い感銘を受けました。彼の絵は
あまり目にする機会がなくて、実際に観ると、その独特の刻み付けたようでかすれた
彩色と、人体の痛切なほどにねじれた造形からは、彼の魂の叫びが直に伝わって
来るようです。絵を描くことの根源的な欲求を、感じさせてくれる作品でした。
全体を観終えて、18世紀からのウィーンが啓蒙思想の奨励や、城壁の撤去とリンク
通りの建設、万国博覧会の開催などを通して、自由で開放的な都市の特色を醸成し、
次第に芸術を花開かせて行った様子が伝わって来ました。ウィーンは正に、芸術の
都に相応しい都市であると、感じました。
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