2019年9月16日月曜日

国立国際美術館「ウィーン・モダン」展を観て

国立国際美術館で、「ウィーン・モダン クリムト、シーレ世紀末への道」を観て来ま
した。

クリムトやシーレの魅力的な作品も展示されていますが、全体の構成としては、
19世紀末から20世紀初頭における絢爛たる総合的芸術の開花に至るまでの、18
世紀からのウィーン発展の歴史と経緯をたどる展覧会です。

それ故に絵画を初め、工芸、服飾、建築デザイン、印刷物と、多様なジャンルの
多数の作品が会場を彩り、さながら芸術の都ウィーンの見本市のような、華やいだ
気分を醸し出しています。

個別の作品で印象に残ったものを数点挙げてみると、まず「作曲家ヴォルフガング・
アマデウス・モーツァルト」の肖像並びに、「ウィーンのフリーメイソンのロッジ」に描か
れている当人の姿です。ウィーンは音楽の都でもあり、彼以降の著名な作曲家、
シューベルト、ヨハン・シュトラウス、マーラーなどは、直ぐにこの都市と結び付きます
が、モーツァルは私にとって、最早伝説的存在のような先入観があり、彼がこの都市
で実際に暮らし、啓蒙的な空気の中で音楽活動をしたという事実には、彼との距離
が一気に近づくような親近感を覚えました。

次にナポレオン率いるフランスとの戦乱後、内向きな気分に支配されるようになった、
ビーターマイアー時代のウィーンの画家ヴァルトミュラーの絵画「バラの季節」。後の
印象派の時代の到来を予感させるような、戸外の光の輝きと共に自然に包まれる
ことの幸福を、全身に感じさせてくれるような、忘れがたい絵です。

最後にクリムトも点数は少なくとも良い作品がありましたが、シーレの「自画像」、
「美術批評家アルトゥール・レスラーの肖像」に、強い感銘を受けました。彼の絵は
あまり目にする機会がなくて、実際に観ると、その独特の刻み付けたようでかすれた
彩色と、人体の痛切なほどにねじれた造形からは、彼の魂の叫びが直に伝わって
来るようです。絵を描くことの根源的な欲求を、感じさせてくれる作品でした。

全体を観終えて、18世紀からのウィーンが啓蒙思想の奨励や、城壁の撤去とリンク
通りの建設、万国博覧会の開催などを通して、自由で開放的な都市の特色を醸成し、
次第に芸術を花開かせて行った様子が伝わって来ました。ウィーンは正に、芸術の
都に相応しい都市であると、感じました。

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