2019年9月9日月曜日

泉屋博古館「文化財よ、永遠に」を観て

泉屋博古館で、住友財団の修復助成30周年を記念した特別展、「文化財よ、永遠に」
を観て来ました。

住友財団は文化財維持・修復事業への助成を30年近く続け、修復事例も累計千件に
達するということです。本展では、絵画、仏像などの修復方法の解説と、合わせて実際
に修復された文化財を展示することによって、どのように修復活動が行われているか
を、分かりやすく明示しています。

まず私が興味を覚えたのは、絵画、屏風の修復のための基礎知識として、屏風の基本
構造を示したコーナーで、桐材で格子状の枠組みを作った上に、3種類の和紙を張り
重ねて、屏風の下地を作るということを説明した部分です。日頃屏風がどのような構造
になっているかなど、考えも及ばなかったので、新鮮な驚きでした。

また軸物の絵画、屏風、絵巻物の修復を担当するのが装こう師で、実は私たちの店は
特殊な広幅の白生地を扱っているので、装こう師の方とも取引があるにも関わらず、
その職業がどのようなものであるかを知らなかったので、仕事の面でも参考になりま
した。

さて実際に修復された文化財の展示室に移ると、まず藤原定家の明月記が目に止まり
ました。この巻物状の日記は、当時紙が大変貴重なものであったので、手紙などの裏を
再利用した上に継ぎ合わせて、書き付けてあるということで、表面だけではなく、裏面も
歴史的に貴重なものであるということです。実際に見ると裏面の文字も表面に浮き出て
いて、臨場感があります。修復によって、良好な状態が保たれているようです。

一方修復のために仏像を解体すると、胎蔵仏や内蔵品、内部の書き付けなどが発見
されて、新たな事実が判明することも多々あるようで、本展では修復された仏像と
胎蔵仏等を並べて、そのような事例を分かりやすく解説していました。知的な感興を
そそる展示でした。

一見地味な展覧会ですが、文化財保存の重要性を示してくれる、貴重な展観でした。

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