2017年8月24日木曜日

鷲田清一「折々のことば」852を読んで

2017年8月23日付け朝日新聞朝刊、鷲田清一「折々のことば」852では
第二次世界大戦後の東西分断の中で、再統一のために尽力した当時のドイツ大統領
リヒャルト・V・ヴァイツゼッカーの演説集「言葉の力」から、次のことばが取り上げられて
います。

 「悪」を名指しにすること・・・・・ではなく、われわれをつなぎ合わせる代わりに引き離し、
 ぶつけ合う「弱さ」が問題なのです。

ナチスの狂気の時代を経ての敗戦後、壊滅的な打撃を受け、東西冷戦という複雑な
国際情勢の最前線となって分断されたドイツを、再び統合するために力を尽くした
優れた政治家で、傑出した演説の名手ヴァイツゼッカーの生き方には、かねてより
興味を持ち、彼の自伝も読みました。

というのは、私たちの日本も第二次大戦ではドイツと同じ枢軸国側に組し、アジアに
おいて多くの周辺国に甚大な被害をもたらしながら、戦後処理という外交分野でまだ、
被害を受けた国々に満足な理解を得る解決を見出していないと、感じるからです。

そのような状況の中で、政治家の果たすべき役割は何か?それがヴァイツゼッカーの
業績から私が幾ばくかでもヒントを得たいと、思ったことでした。

上記のことばで彼は、人の「悪」をあげつらうのではなく、一人一人の「弱さ」をこそ克服
すべきであると、語り掛けています。

あの戦争の歴史を語る多くの記録や書物を読んでみても、行為や結果の悲惨さは言う
までもなく、なぜそのような状況に陥ったかという部分の検証を辿ると、とてもそのような
重大な結果をもたらすとは思われない小さなほころびが、最終的には取り返しのつか
ない事態に至る姿が、しばしば見えて来ます。

恐らく「悪」というものが最初からあるのではなく、私たちはそれを呼び込むこととなる
「弱さ」に打ち勝つ勇気を持つべきであると、彼は語りたかったのでしょう。

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