2017年8月11日金曜日

鷲田清一「折々のことば」837を読んで

2017年8月8日付け朝日新聞朝刊、鷲田清一「折々のことば」837では
哲学者加藤尚武の「環境倫理学のすすめ」から、次のことばが取り上げられています。

 いかなる世代も未来世代の生存可能性を一方的に制約する権限をもたない。

地球温暖化の問題は、今日では未来の深刻な環境破壊が様々に予測され、私たちも
一応危機感を感じてはいるけれど、差し迫った危険を実感出来ないだけに、目先の
経済的恩恵や生活の便利さ、快適さをついつい優先して、なかなか現状を変えられない
というのが、今直面している現実でしょう。

未来の世代への想像力をもっと働かせることが出来たら、我々の取り組みも随分変わる
に違いありません。

また我が国が直面している財政赤字の問題、国家の債務が過剰に膨らんでいる問題も、
我々一人一人が、未来の世代の引き受けなければならない重い債務に、思いを致す
ことが出来れば、目先の自分たちの利益を犠牲にして、先の世代の負担を軽減する
財政政策にも、もっと理解が広がるかもしれません。

他方私の携わる和装業界について考えるならば、この国の生活習慣の急速な変化など
による着物離れという状況の中で、織屋から呉服店に至るまで、この仕事に携わる人が
著しく減少して、最早存続が危ぶまれる事態に陥り、着物文化を未来に伝えられない
可能性も生まれて来ています。

ここ数年秋に修学旅行で京都に来られる、伝統文化に興味を持つ埼玉大学附属中学の
生徒さんが、私たちの三浦清商店を見学に訪れて下さいますが、先日訪問に先立つ
質問書が届き、その中に伝統工芸を守るために自分たちの出来ることは何かという、
真摯な質問を見つけて、私自身この仕事に携わる者として励まされました。

未来へこの文化をつなぐためにも、微力ながらもうひと頑張りしたいと思います。

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