2017年6月24日土曜日

国立国際美術館「ライアン・ガンダー この翼は飛ぶためのものではない」を観て

ライアン・ガンダーの名前は今回初めて知りましたが、国際的に活躍する注目の
現代美術家ということで、是非観ておきたいと思い、大阪の展覧会場に足を運び
ました。

さて主会場に入り作品を一通り観て回ったところ、個別には印象に残った作品も
ありましたが、何か全体としてどう消化したら良いのか分からないような、漠然とした
雲をつかむような気分に陥り、途方に暮れてしまいました。

それで、新聞の展覧会評にもアドバイスされていたように、上階で同時開催されて
いる、「ガンダーによる所蔵作品展ーかつてない素晴らしい物語」の方に、鑑賞を
中断して向かいました。

この展覧会は、国立国際美術館の所蔵作品を、この美術家が自ら配置を決めて
展示した興味深い展観で、お馴染みの館蔵作品が2点づつのペアーで並べられて
いました。

その組み合わせが絶妙で、私は特に、イサム・ノグチの「黒い太陽」という彫刻作品
と吉原治良の「無題」という絵画作品の並置に、日本人のDNAとでもいうような
共通の感性を感受し、ジョセフ・コーネルの「カシオペア#1」という小箱に天体が閉じ
込められたような精巧なオブジェとアンゼルム・キーファーの星空を現す荒削りな
絵画に、宇宙の神秘を感じるなど、見慣れた作品がガンダーのインスピレーションに
よって新たな息吹を与えられていることを、目撃しました。

この2つのものの比較から新しい感覚を呼び覚ます彼の方法論を頭に置いて、もう
一度主会場の作品を観ると、まずそれぞれの緩やかに区切られた展示室に設置
された作品たちが有機的につながっており、更には全体としても漠然とした結合性を
示し、鑑賞者はあたかも脳内世界を彷徨うような感覚にとらわれることに気づき
ました。今まで味わったことのない、不思議な美術体験でした。

個別の作品では、「イマジニアリング」、「何でも最後のつもりでやりなさいーシャー
ロット」、「何でも最後のつもりでやりなさいーマヤ」の、映像と写真、冊子状のものを
配置した抒情的で繊細な表現、くりぬかれた壁面から覗き込む、広々とした白い空間
一面に夥しい黒い弓矢が突き刺さったような、静寂かつ胸騒ぎを起こさせる情景展示
が、印象に残りました。


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