2017年6月14日水曜日

鷲田清一「折々のことば」778を読んで

2017年6月8日付け朝日新聞朝刊、鷲田清一「折々のことば」778では
フリーの編集者姜尚美の「何度でも食べたい。あんこの本」から、大阪の和菓子屋
「河藤」の先代店主の次のことばが取り上げられています。

 小さいからってこんな手間かかってるもんになんでこんな安い値段つけなあかん
 ねん!

そう言えば三浦清商店の初代店主の私の祖父が、店の奥から、店先で値切る玄人の
お客さんに応対している若い店員に、「値切らはるんやったら、帰ってもらい!」と叫んで
いたのを、思い出しました。今となっては、隔世の感がありますが・・・

値打ちのあるものを適正な価格で販売する。値切られたらすぐに安くするようでは、
店の信用に係わる。そんな思いがあったのでしょうが、今日では、そんな風にしつこく
値切るお客さんも無くなりました。商慣習の変化とも言えるでしょう。

でもその頃の商売人というものは、大抵の場合商品の値打ちを知っていて、それに
見合う値段を推し量りながら、同じ値切るにしても価格を提案していたと思います。
もしそうでなければ、商売上で売り手に相手にされないし、良い品物を適正な価格で
入手することが出来ない訳ですから。

話は飛んで、最近の和装業界では販売不振で商品がだぶつき、その上金融品も出回り、
品質に相応しい適正な価格が分かりにくかったり、あるいは小売り段階では、今なお、
私たちが考える商品の価値をはるかに超える高額で、販売がなされるようなことがある
ことも、耳にします。

私たちの店では、一般消費者の方に向けては、あくまで誂え染めという一点生産ですが、
品質に納得の頂けるものを適正な価格で提供するというポリシーを、これからも守って
行きたいと考えています。

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