2017年6月12日月曜日

「後藤正文の朝からロック 沈黙の深み」を読んで

2017年6月7日付け朝日新聞朝刊、「後藤正文の朝からロック」では、「沈黙の深み」と
題して、音楽における休符の重要性、言葉における言わないこと、書かないこと、黙って
いることの大切さについて語られていて、心に残りました。

音楽の休符の役割については、私は門外漢で想像もつかないけれど、人と対話する
ときの沈黙や、文章を書くときの書かれざるものの重要さは、それなりに分かる気が
します。

まず接客が重要な部分をなす私の仕事では、勿論基本は取扱い商品についてお客さま
の希望を真摯に聞き、ご要望にそう商品の情報を出来るだけ正しくお伝えして、満足の
ゆく選択をして頂くことですが、その話を進めて行く過程で、言葉のやり取りの間に、
お客さまが商品を見比べ決断をされるまでの時間、あるいは逆にどの商品を選べばいい
かアドバイスを求められたときに、お客さまの抱いておられるイメージも考慮に入れながら、
満足のいく選択を促す助言を加えるための適度な間など、ちょっとした沈黙が重要な
意味を持つことがあると、実感します。

あるいは仕事に限らず会話の中で、相手にあることを伝えようとするとき、一気呵成に
説明するよりは、相手の反応を見ながら説明する方が、内容がずっとよく伝わりますし、
会話の中の間が、互いの感情の交感を醸成することもあります。

対話における言葉のやり取りの間は言わずもがな、文章における行間の効果は、さらに
重要な意味を持つでしょう。私も説明的な文章ではなく、ものを書いて自分の思いを人に
伝えようとするとき、実際に書き込む言葉によって思いを伝えることの困難をしばしば
実感します。そしてごくまれに思いが伝わる文章を書くことが出来たと感じるのは、自分が
書いた直接の言葉ではなく、決まって行間からその思いが立ち上って来るときなのです。

大切なことは目には見えないのだ、という言葉をふと思い出しました。

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