2017年4月2日日曜日

NHK連続テレビ小説「べっぴんさん」最終週を観て

NHKの連続テレビ小説「べっぴんさん」が終了しました。

神戸の子供服メーカー「ファミリア」の創業者がモデルで、脚本家渡辺千穂のオリジナル
作品ということですが、私には女性的視点からの柔らかく、丁寧な物語の運びが心地よく、
物語が終わった時には、言い知れぬ余韻が残りました。

巷では、最終盤にドラマの起伏が乏しく、冗漫な印象があったという意見もあったよう
ですが、私は、最終週の新たな展開はなくとも、それまでの出来事を振り返り、登場人物
一人一人の心に問いかけるような物語の終わり方に、終始一貫した脚本家の想いを感じ
取りました。

私自身の白生地屋という仕事に引き付けて考えますと、阪神淡路大震災以前、かつて
神戸では染色教室が盛んで、多くの教室の先生が生徒さんの教材用の白生地を買いに、
私たちの店を訪れて下さいました。

「べっぴんさん」のストーリーからも明らかなように、神戸は関西の中でも海外に門戸を
開いたハイカラな港町で、我が国の中でも、西洋の服飾文化に通じる手作りの気風の
土壌が育まれやすかったのだと推察されます。

また他方、京都の和文化というものに対して、神戸の人々はある種憧れを抱いていて、
それは我々京都人が神戸の西洋的なハイカラさに憧れを抱くのと同様ですが、彼の地で
手仕事としての染色が盛んだったのだと今は思います。

ところが、長い不況や、甚大な被害をもたらした自然災害を経て、昨今の高度に情報化
された社会では、決して効率的ではない手仕事というものが、次第に人々から顧みられなく
なって来ているように感じられます。また同時に、近頃のこの社会の殺伐とした気分は、
その現象と無縁ではないように、私には思われるのです。

「べっぴんさん」において作者は、手作りの品が生み出す温もりと、その心を伝えて行く
ことの大切さを、まさにその想いを視聴者に伝えるために相応しい丁寧な方法を用いて、
描こうとしたのではないか!今はそう感じます。

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