2017年4月9日日曜日

京都高島屋7階グランドホール「日本美術と高島屋」を観て

大阪にある高島屋史料館所蔵の美術作品を通して、近代以降における高島屋と
芸術家との交流を紹介する展覧会です。

まず会場に入る時に入場料を支払う必要がなく、作品目録が丁寧に手渡しで配られた
ので、この百貨店が大切に育んで来たものを広く顧客に紹介するという、良い意味での
私的なイベントの雰囲気が感じられました。

展覧会の説明書きを読むと、明治時代に海外との交流の中で生起した、日本美術の
一大ブームの需要に応えるために、高島屋が工芸品の輸出に乗り出して、この百貨店と
芸術家との深い関係が生まれたそうです。それ以降、着物を制作するための下絵を
若手の日本画家に依頼したり、店内の美術ギャラリーで若手、ベテランを問わぬ画家の
個展を開催したり、あるいは大家の大規模な回顧展に会場を提供したりと、パトロンをも
兼ねる形で芸術家との関係は更に強くなって行ったといいます。

さて展示される作品を順に観て行くと、日本を代表するようなそうそうたる画家の、美術館
で観るのとは少し趣きが違う、良質ではあるが何か肩ひじ張らぬ絵画が並び、それぞれの
画家の作品の新たな魅力に接するようにも、感じられます。

また画家の原画と、それに基づき制作された手描き友禅、刺繍の工芸作品が並べて展示
されているコーナーでは、その当時の日本の工芸技術の緻密さ素晴らしさが、遺憾なく
明示されて、驚きと共に、強い感銘を受けます。我が国の近代美術史という観点からも
有意義な展観であると、感じました。

更にこの展覧会の最後に、特別展示として、高島屋当主飯田家とトヨタ自動車創業家
豊田家の大正11年の婚礼に因み、両家から高島屋史料館に寄贈された美術品や呉服、
また本展に寄せて特別出品された豊田家所蔵の婚礼衣装が展示されていて、これらの
中では特に呉服、衣装類の友禅、絞り、刺繍の技巧が今日では到底再現不可能なほど
素晴らしく、最盛期の呉服に携わる職人の手仕事の確かさに触れて、往時を偲ぶと共に、
何か寂しささえ感じさせられました。

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