2017年4月26日水曜日

「京都国際写真祭2017」ヤン・カレン展を観て

今回は、京都生活工藝館無名舎が会場のヤン・カレン展を観て来ました。

この会場も私の家にほど近い代表的な京町家の一つで、祇園祭山鉾連合会前理事長
吉田孝次郎氏の生家で、文化庁の登録有形文化財に指定されています。私もこの建物
の前はしょっちゅう通りますが、実際に訪れるのは初めてで、丁度良い機会が出来たと、
有難く感じました。

中に入ってみると、京町家らしい落ち着いた風格のある佇まい、計算された配置による
坪庭と建物の調和も美しく、特に窓や軒先から射し込む柔らかな光が、なんとも言えぬ
風情を醸し出していました。

さてヤン・カレン展ですが、今展ではこの写真家が京都に滞在して、伝統工芸の各職人
に、フェルメールも用いたといわれ、現在のカメラの原型をなす映像の投影装置、カメラ・
オブスクラの制作を依頼する中で、彼らの仕事に密着して、職人の道具、技、それに
まつわるものなどを写真に写し取ることによって、自然と密着した彼らの営みを明らかに
するとともに、日本、ひいては東洋的な生活観、美意識を浮かび上がらせようと試みて
います。

これらの被写体が写し込まれた作品は、モノクロの表面の底に、深い祈りや精神性の
輝きが自ずと滲み出て、決して激しくは主張しないけれども、穏やかで、温もりのある
存在感を醸し出しています。手仕事というものの原形を観る思いがしました。

また実際に制作されたカメラ・オブスクラが、坪庭の風景を投影するように配置されている
ことも含め、この展示会場の住宅とヤンの写真作品の相性も素晴らしく、建物と作品が
見事な相乗効果を生み出している展覧会であると、感じました。

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