2016年9月21日水曜日

庵野秀明総監督映画「シン・ゴジラ」を観て

今話題の映画「シン・ゴジラ」を観て来ました。私はエヴァンゲリオンは観ていない
ので、庵野監督と言っても宮崎駿作品「風立ちぬ」の主人公の声優のイメージしか
思い浮かびません。それ故以下、幼い時、あるいは若い頃に、胸をときめかせて
観たゴジラ映画との比較を念頭に、この文章を進めて行きたいと思います。

「シン・ゴジラ」を観てまず感じたのは、この映画が甚大な災害に直面した時の
対応を主題に据えた映画である、ということです。その点が従来のゴジラ映画とは
根本的に違います。

今までのゴジラ映画は、私の観て来た限り、時代や社会的背景は時々に変わって
も、ゴジラという怪獣の猛威になすすべもない人間を描いて来たと思います。

つまり人類の造りだした核兵器に対する、汚された自然の怒りの象徴として生み
出されたゴジラが、絶対的な力を用いて人間にその罪を思い知らせるというのが、
基本的なモチーフだと感じて来ました。

従ってゴジラはいかに強大で無敵ではあっても、自然に由来するものとしての
生き物的な感情、たとえば怒りや怨念を体現する生身の怪獣であったと思います。

ところが「シン・ゴジラ」では、ゴジラは最早生き物を超越してしまった、例えば
ロボットに近い究極の活動する物体となってしまったと、感じられました。

それ故ゴジラの来襲はこの映画では、思いがけぬ自然災害の勃発と同義になって
いるのだと、思います。

でもこの映画のすごいところは、ゴジラの怪獣映画としての約束事をことごとく守り
ながら、あくまでフィクションの枠内とはいえ、それが前述のような自然災害時の
人間の取るべき対応を示して、私たちの未来への希望の方向性まで描き出して
いることです。

そのために庵野監督は、現在の日本の政治状況や国際情勢を皮肉も込めながら
赤裸々に描き、セットや小道具は細部まであくまで精巧に作り上げることによって、
物語のリアリズムを担保しています。

確かにこの時代、今の日本の現実に相応しい、怪獣映画の一つの新しい形を
提示してくれる映画と、感じました。

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