2016年9月16日金曜日

漱石「吾輩は猫である」における、寒月と迷亭の女性の地位向上の品定め

2016年9月15日付け朝日新聞朝刊、夏目漱石「吾輩は猫である」連載104には、
寒月と迷亭が当節の女性の地位向上について意見を交わす中で、迷亭が
語る次の記述があります。

「仰せの通り方今の女生徒、令嬢などは自尊自信の念から骨も肉も皮まで
出来ていて、何でも男子に負けない所が敬服の至りだ。僕の近所の女学校の
生徒などと来たらえらいものだぜ。筒袖を穿いて鉄棒へぶら下がるから
感心だ。・・・」

一体この当時の女性の地位は、どんなものだったのでしょうか?江戸期以前の
封建時代には、男尊女卑の気風が強く、女性の地位は相対的に低かったと
想像されますが、明治に入り西洋的な考え方が一気に流れ込んで来ても、
恐らく延々と続いて来た価値観はおいそれと変わらなかったでしょう。

その証拠に、大正、昭和初期の世代の一般のものの考え方の中にも、女性を
一段下に見る価値観があったと、思い出されます。

しかし明治時代であっても、漱石の周囲のような知識人の間では、女性に
一目置く開明的な気分があったのかもしれません。その証に、この小説の
中でも苦沙弥先生の細君は、結構主人に言いたいことを言う設定で、その
やり取りが独特のいい味を出しています。

それにしても、現代の男女の平等、雇用の機会均等が言われる時代でも、
女性の非正規雇用が多く見られ、また母子家庭の貧困が深刻な問題となって
いるように、真の女性の地位向上はなかなか実現しないようです。

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