2017年7月14日金曜日

京都国立近代美術館「技を極める ヴァンクリーフ&アーベル ハイジュエリーと日本の工芸」を観て

フランスを代表するハイジュエリーメゾンのヴァンクリーフ&アーベルのジュエリー作品と、
日本の優れた工芸作品を比較展示し、それぞれの「技」の粋を浮かび上がらせようとする
展覧会です。私は特別に宝飾品に興味がある訳ではありませんが、「技」を見せるという
趣旨に惹かれて、会場を訪れました。

第1セクションでは、横長の広い展示室の中央ほぼ一杯を占める、長いガラス製の展示
ケースに、「バンクリーフ&アーベルの歴史」と題して、メゾン創設期から各時代の
代表的なジュエリー作品が時系列に沿って並べられて、正に壮観です!

上質の宝石、貴金属がふんだんに使われ、洗練されたデザインと技巧の粋を凝らせて、
作品をいかに美しく魅力的なものにするかに、職人の全神経が集中されていると感じさせ
ます。

年代順に展示ケースを覗き込みながら進む鑑賞者の足が、ため息と共につい滞り勝ちに
なって、私の訪れた休日の午前中には、待ち時間が30分ほどになっていました。展覧会場
でこんなに熱気に満ちた雰囲気にお目にかかるのは初めてで、これこそが美術作品とは
また違う、宝飾品の魔力なのかも知れません。

第2セクションでは、「技を極める」と題して、ヴァンクリーフ&アーベルの中期までの
ジュエリー作品と、それに呼応する日本の主に明治、大正期の工芸作品が、比較し易い
ように並列的に展示されています。

光り輝く宝飾作品と、一見地味なものも多い日本の工芸作品の比較は、工芸作品に分が
悪いようにも思われますが、そこはさすが超絶技巧と西洋でもてはやされた作品の系譜
に連なるものだけあって、まず七宝や陶芸の作品は宝飾と遜色ない光輝を放ち、金工、
漆芸、牙彫、刺繍はじっと見ると、繊細な技の粋を凝縮させた表現に感銘を受けます。

素材の宿命から、輝きの持続という部分では劣るところもありますが、それぞれの
影響関係と共に、洋の東西、優れた工芸品に優劣のつけ難さを感じました。

第3セクションでは、「文化の融合と未来」と題して、現在に至るヴァンクリーフ&アーベル
のジュエリー作品と、日本の重要無形文化財保持者などの一線で活躍する作家の現代
工芸作品をセンス良く配列して、展示しています。

これらの作品を観ると、ジュエリーの現代的洗練は言うに及ばず、日本の工芸はより
ファッション性、作家性を重視する方向に進んでいるように感じられます。

ヴァンクリーフ&アーベルがメゾンのブランド力を優先して、技を継承しながらも、職人の
無名性を維持しているのに対して、用途や文化的背景、顧客層の相違からか、東西の
工芸が違う方向に進んでいることは、興味深く思います。

美しく魅力的な宝飾品を沢山観て、幸福感に浸ると共に、工芸における職人性についても
考えさせられる、展覧会でした。



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