2017年7月19日水曜日

鷲田清一「折々のことば」817を読んで

2017年7月19日付け朝日新聞朝刊、鷲田清一「折々のことば」817では
政治思想史家尾原宏之の「娯楽番組を創った男」から、次のことばが取り上げられて
います。

 大衆が見たがるものを提供しているのは、大衆自身である。

戦後、NHKで伝説的人気を博することになる娯楽番組を立ち上げた、丸山鐵雄
(政治学者丸山眞男の兄)の奮闘を評する中のことばだそうです。

大衆の総体としての行動は、一見危なっかしいようでいて、実は絶妙にバランスの
とれたものであることが、往々に見受けられるように感じます。

選挙における行動然り、世論調査然り、一躍脚光を浴びるものや人の人気の移り
変わり然り。

いずれも、事前には予測が不可能なように思われても、結果としてはバランス感覚に
優れた選択が行われたり、時宜にかなった妥当な数値が出たり、後々振り返ると
その一時の人気が時流に相応しいものであったと、思い当たったりすることがよくあり
ます。

これらの現象を見ていると、大衆というものは無意識の集合としての英知を備えた
ものとさえ、思われてきます。勿論、扇動された大衆の暴走ということは歴史的に
繰り返されて来て、私たち一人一人は、そのような状況に陥った時にこそ冷静な
判断が出来る自己を磨かなければならないのだと、感じます。でも、日常における
大衆の思考の手堅さは、もっと尊重されていいと、私は思います。

決して際物や刹那的ではなく、多くの人々に末永く愛される品物を提供し続けること、
私たちの店が目指すべき指針です。

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