2016年12月14日水曜日

鷲田清一「折々のことば」603を読んで

2016年12月10日付け朝日新聞朝刊、鷲田清一「折々のことば」603では
名手O・ヘンリーの短編小説「賢者の贈りもの」から、次のことばが取り上げられて
います。

  「あたし、髪が伸びるの速いから」

ずいぶん懐かしいことばを、目にした心地がしました。O・ヘンリーの短編は、
教科書で「最後の一葉」を読んで子供心に感銘を受け、前記の作品も含む短編集
を手に取ったのでした。

後に作者の生涯の概略を知り、決して平たんではなかったその人生の中で、
これらの珠玉の作品が磨かれたのではないかと、想像を巡らせたことも思い出され
ます。

若い時に読書で得た感銘は、一生大切なものとして残るのでしょう。

またこの作品は、本来贈り物とはこのようなものであるべきだと、感じさせます。
つまり、相手が何をプレゼントされたら一番喜ぶかを真剣に考えて、自分に出来る
精一杯の品物を贈る。互いがそのように考えて贈った結果が、たとえそれぞれの
相手への思いやりゆえに行き違いになったとしても、二人の心が十分に通い合って
いることが今更ながら確認されて、幸せな気分になれる・・・。

日常の中でものを贈る場合、私たちは忙しさにかまけて、また義務感から、時として
相手への気持ちをおろそかにして、手軽で、軽便な方法で品物を送るということが
起こりますが、真心を込めてプレゼントをするということの本来の意味を、この
作品は示してくれていると感じさせます。

クリスマスが近づくこの時期に相応しいことばだと、思いました。

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