2016年7月22日金曜日

京都市美術館「モネ展」を観て

マルモッタン・モネ美術館の所蔵品によるモネ展です。同美術館は、医師として
個人的な親交があり、初期からのコレクターとして知られるド・ベリオの
コレクションと、モネの息子ミシェルより遺贈された画家のプライベートコレクション
によってなる、充実したモネ作品の収蔵で有名で、本展もそれらの中から選ば
れた作品によって構成されています。従って従来のモネ展より、会場全体に
親密な空気が流れ、モネの作品と画家自身の新たな一面を見せてくれるように
感じられます。

まず冒頭<家族の肖像>のコーナーでは、同じ印象派の画家として親交の
深かった、ルノワールによるモネとモネ夫人の肖像画が並び、次に画家自身に
よる子息のポートレートが続きます。私の記憶する限りでは彼の肖像画を観る
のはこれが初めてで、特にこれという特色があるわけではありませんが、愛する
息子に対する熱を帯びた眼差しが伝わって来ます。

<若き日のモネ>のカリカチュア作品を観るのも最初で、画家が十代の時に
そのような絵を描いていたとはついぞ知りませんでしたが、風刺画とはいえ
どこか上品で、確かなデッサン力も感じられるので、先達としてブータンが彼に
本格的な絵を描くよう勧めたことが、うなずける気がします。

<収集家としてのモネ>では、彼が手元に置き愛蔵した他の芸術家の作品、
影響を受けた画家、親交のあった美術家、気になる後進の作品が並んで
いますが、それらは概して水彩画、小さな彫刻作品、版画などの小品で、彼が
自室でこれらをめでる様子が想像出来る気がします。

<ジョルジュ・ド・ベリオ・コレクションの傑作>では、残念ながら私が訪れた
日にはもう、印象派の代名詞ともなった「印象・日の出」は展示されていません
でしたが、それに代わる「テュイルリー公園」は素晴らしい作品で、光の移ろい
というような色彩効果を中心に描く画家という印象のあるモネの、より写実的で
オーソドックスな風景画においても、優れた画家であるという一面を見せられる
思いがしました。

<睡蓮と花><最晩年の作品>に展示されるのは、晩年のモネが手塩に掛けて
作り上げたジヴェルニーの日本庭園で創作に没頭して産み出した作品群で、彼の
制作活動がより個人的親密さを増した時代の絵画です。気に入りの題材を、
後期の彼の興味の対象である光の移ろい、揺らめきを追い求めながら、飽くこと
なく描き続けた作品たちで、その絵画に賭ける情熱、それによって与えられる
至福の時間、しかしいかなる天才にも終焉の時が訪れるという厳然たる事実が
示されているようで、最後には粛然とした気分に囚われました。


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