2015年3月7日土曜日

京都高島屋グランドホール 「デザイナー芹沢銈介の世界展」を観て

私たちの店が色々な種類と幅の白生地を商っている関係上、お客さまに
型絵染を制作している方も多く、その作品を目にすることもよくあります。
従って、本展第1部「多彩な造形表現」で、この染色技法の人間国宝
芹沢銈介の作品群を目の当たりにした時、まず湧き起って来た感情は、
一種の懐かしさでした。

つまり芹沢の仕事が、彼以降の型絵染の流布、発展に多大な影響を
及ぼし、多くの制作者たちが、その多寡のほどは別にしても、少なからず
彼の薫陶を受けてきたことを、今さらながら確認出来たからです。

そのように考えてみると、彼の作品が当時において、著しく革新的であった
ことに改めて気づかされます。

民芸運動に傾倒し、その志向はあくまで日用の美であったため、作品に
奇をてらうあざとさ、ことさら目立とうとする姿勢は感じられませんが、
その作品の魅力は明らかに、それまで存在しなかった美の一つの形を
提示したことにありました。

ではそれはどのようなものであったのか、ということに思いを巡らせる
ためには、本展の第2部「世界各国の美術・工芸品」が、明確な示唆を
与えてくれます。

芹沢は生涯に、世界各地の多くの美術、工芸品を蒐集しました。それらを
観てみると、彼が名もなき庶民の日常生活や宗教儀式などに、実際に
使用されていたものの中に潜む美しさや味わいを、確かな目で見出して
いたことが分かります。

つまり芹沢は、自らが愛して止まぬ、世界各地の人類の長い生活の営みの
歴史に通底する、日常の暮らしの潤いとしての美のエッセンスを抽出し、
彼の生きた時代と場所の要請に答える形で統合し、提示してみせたのでは
ないか?彼が私たちの前に、分かりやすい姿で示してくれた美の形が、
誰の心の中にも潜在的に存在するものの具現化であったゆえに、観る者は
深く心打たれ、彼の表した美の基準は、以降確固としたものとして、我々の
心に刻みつけられたのでしょう。

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