2015年3月1日日曜日

職人の心を持った商売人でありたい

時々私たちの仕事が、和装業界の中でどのような位置づけになるのか、
考えてみることがあります。

白生地屋というと一般的には、着物用の反物の白生地を問屋や呉服店、
悉皆業の方に販売する商売になります。しかし私たちの店は、以前にも
記したように、広幅の白生地も扱うという性格上、切売も行っているので、
業界を超えたさらに多様なお客さまからの注文があります。

また最近は小口の誂え染めも承っているので、一般消費者のお客さまも
ご来店頂きます。つまり、白生地の卸、切売のみならず、呉服悉皆、
小売業の役割もいくらかは、になっているのです。

そのような商売の形態から、業界内で幅広い職種の方とお付き合いする
ことになります。白生地産地の織屋さんや産地問屋の方が折々に挨拶に
こられます。承った誂え染めを依頼するために、分業になっている
それぞれの職人さんのところにも、こまめに訪れます。

一方お客さまとして、呉服問屋、呉服店、悉皆や、工芸家の方々と顔を
合わせますし、店頭で消費者の方に直接お目にもかかります。

色々な方とお話をしていると、決してよそごとではありませんが、まず
業界の窮状が見えてきます。売上減少、後継者不足、業界の縮小、
商品品種の極端な減少・・・。他方、呉服好きの消費者の方からは、
着物もまだ捨てたものではないと、反対に勇気をいただくこともあります。

このように私たちの商売も、以前に比べて随分多岐に渡るようになって
来ましたが、そのような状況においても、私は和装という日本の文化を
何とか絶やさないようにしたいという思いを、常に持ち続けたいと
考えています。

そのために私に出来ることは、取り扱う商品を単に右から左に手渡す
のではなく、造り手と受け手の間に立って、両者の良き仲立ちをする。
さしずめ、造り手の心に適う商品を、お客さまに送り届ける。つまり、
職人の心を持った商売人でありたいと、思っています。

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