2021年4月30日金曜日

「福岡伸一のドリトル的平衡」を読んで

2021年4月29日付け朝日新聞朝刊「福岡伸一のドリトル的平衡」では、本紙に現在「新・ ドリトル先生物語」を連載している生物学者の筆者が、なぜこの物語を連載するに至った かについてのエッセーを寄せています。 その文章によると福岡は、昨年早春の自らのガラパゴス探検の折に、ピュシス(ギリシャ 語でありのままの自然を意味する)とロゴス(同、言葉、論理、あるいは人間を人間たら しめた思考)のあいだに揺れる人間の進化について、今一度見つめ直したいと思った、と 述べています。そしてそのアイデアが、彼にとって初めてのフィクションである、「新・ ドリトル先生物語」の執筆へのつながったと言うのです。 つまり、ここで言う人間のピュシスは、生、性、病、死の恣意性から本来的に逃れられ ないということで、ロゴスは、人間がその力によって、社会、都市、文明を作り、世界の 全てを制御下におきたいと希求するようになったことを指します。すなわち人間は、この 相矛盾する力に翻弄されながら、進化を遂げて来た、と言うのです。 私も幼い時からロフティングの「ドリトル先生物語」を愛読しており、また福岡の「動的 平衡」にも強い感銘を受けたので、この「新・ドリトル先生物語」の連載は、大きな期待 を持って読み続けています。 また、上述のピュシス、ロゴスという矛盾する属性に翻弄されながら、歴史を刻んで来た 人間の在り様が、正にそのことによって高度な文明を築きながら今なお、生きる上での 様々な問題を抱える私たちの姿に重なっていると私自身感じて来たので、正に時宜を得た 問題提起だと思われます。 「新・ドリトル先生物語」への期待が、ますます高まって来ました。

2 件のコメント:

  1. 私も2021年4月29日付け朝日新聞朝刊「福岡伸一のドリトル的平衡」を読んで店主様と同様の思いを感じましたが、その内容を的確に文章化されていることに感服いたしました。ピュシス、ロゴスの動的平衡論は奥深いですね。

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    1. コメントありがとうございます。日々の体験、思いつくままを綴っているので、このようにコメントを頂くと励みになります。

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