2021年4月27日火曜日

私の大腸がん闘病記⑤

下剤の服用を続けることで、次第に排泄される固形物が少なくなり、最終的には水様の ものだけが出るようになって来ました。それがほぼ透明になり、看護師さんに確認して もらって、オーケーが出れば終了です。 後はベッドに横になって、手術の時間が来るのを待つばかりです。しかしこの段階になっ て、いよいよ緊張が高まって来ました。手術の前に麻酔の処置が施される時には、痛む のだろうかとか、手術中は全く痛みを感じないのだろうかとか、麻酔が切れた後どれほど 痛むのかなど、主に痛みに対する不安が、心の中に暗雲のように広がって来ました。 この時、予めウオークマンに録音しておいた、グレン・グールド演奏のゴールドベルク 変奏曲を聴きました。美しく静謐な旋律が胸に染み入り、徐々に心が落ち着いて行くのを 感じました。これほどに、音楽に救われたのは、初めての体験だと思いました。 いよいよその時が来て、お呼びがかかり、車椅子に乗って手術室に向かいました。そこは 大きな空間の中に、手術室が幾室も整然と並んでいてー記憶がおぼろげですが、恐らく 10室ぐらいはあったと思いますー、これだけ一度に手術が出来るのだと感心したのが、 最初に抱いた感慨でした。 その中の私の手術が行われる手術室の手前で、病室付きの看護師さんから、先ほど挨拶を 受けた麻酔担当の看護師さんに引き継がれて、彼女の案内で室内に入りました。内部は 照明器具の下に、手術台以外は医療機器が整然と並べられた、無駄なものが一切ない無機 的な空間で、あこれは、テレビの医療ドラマで見た通りだなと、戸惑う自分を冷静に眺め るもう一人の自分がいるように、感じました。

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