2021年4月24日土曜日
「青地伯水 現代のことば ジローとピカソ」を読んで
2021年4月21日付け京都新聞夕刊「青地伯水 現代のことば」では、京都府立大学教授で
欧米言語文化ドイツ専攻の筆者が、「ジローとピカソ」と題して、60歳代のピカソの年若い
愛人フランソワーズ・ジローが語ったこととして、アンリ・マティスがピカソに送ったニュ
ーギニア先住民が樹木状のシダから彫り出した大きな彫像のエピソードに触れ、若き日の
ピカソがアフリカの仮面やオブジェを「周囲の敵意に満ちた未知の力と自分たちの間を取り
持つ一種の仲介物」と気付き、絵画とは「このよそよそしい敵意に満ちた世界と私たちの
間の仲介物として存在する呪術のひとつの形」と悟った、ことについて記しています。
私は、このピカソの芸術に対する捉え方を読んで、現代芸術につながる先験的な絵画観を、
彼こそが形作ったのだと感じました。
それまでの絵画観は、宗教画であり、歴史画であり、風景画、肖像画、静物画であっても、
画家にとって、あくまで描いたものをどう見せるかが目的であり、その作品を観た人が思想
的にどう捉えるかに、責任を持つものではなっかた、と思われます。つまり、画家が作品と
鑑賞者の間を取り持つ意識はなかったのではないか、ということです。
しかしピカソは上記の言葉で、芸術は世界と人をつなぐ仲介物であるべきだと、語ってい
ます。このことは、芸術家は作品を創造することいよって、人がこの生きにくい世の中を
渡って行くためのよりどころの一つとなるべきであるということを、語っていることになり
ます。つまり彼は、近代化と共に人々の自意識が高まり、疎外感が広がることによる社会的
要請もあって、自らの作品の社会的使命に、自覚的であったと言えると思うのです。
彼以降、芸術というもののまとう役割も、変容したのだと感じました。
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