2020年4月2日木曜日

「あのとき 2112 ドラえもん誕生」を読んで

2020年3月28日付け朝日新聞朝刊、時代を象徴した「ことば」への思いをつづる
「あのとき」では、朝日新聞メディアプロダクション校閲事業部長・前田安正が
「2112 ドラえもん誕生」と題してエッセイを記しています。

その中で筆者は、のび太の孫の孫のセワシが、子孫を窮地に追い込む、何を
してもだめなのび太の運命を変えるために、22世紀の未来からネコ型ロボット
ドラえもんを送り込むが、その時のび太の「未来が変われば、君は生まれて
こないんじゃないか」という問いかけに対して、「方向さえ同じなら、歴史の流れ
が変わっても、必ず僕らは生まれてくる」と答えた、セワシのことばが心にしみた
と、語っています。

つまり、「失敗、遠回りはいとわない。目指す方向さえ定めていれば、やがて
望みはかなえられる」と、自分にとっての応援メッセージに聞こえた、というので
す。

この記述を読んで私は、自分でも漠然と感じていた、ドラえもんの物語があんな
に多くの子供を惹きつける、秘密の核心に触れたように感じました。

つまり、のび太が劣等生で、何をしてもダメな子だからこそ、ドラえもんが彼を
助ける意味があり、そのドラえもん自身も決して完全ではないので、のび太に
とっては問題がうまく解決する訳ではないけれど、その過程を通して彼は少し
づつ人間的に成長出来るということです。

更には、のび太のような子でも、精一杯試行錯誤を続ければ、いつかは希望に
巡り合えるということを、作者がドラえもんという存在を介して語りかけている
からこそ、その姿を見る子供たちは好ましく感じるのではないでしょうか。

私も筆者のことばに接して、遅ればせながらドラえもんの物語に、勇気をもらう
心地がしました。

0 件のコメント:

コメントを投稿