2016年10月17日月曜日

京都高島屋グランドホール「第63回日本伝統工芸展京都展」を観て

恒例の伝統工芸展京都展を今年も観て来ました。何時ものように私が興味を
持つ染織部門について、感想を記したいと思います。

一口に染織と言っても、大きく分けて織物と染の作品、またそれぞれの中にも
技法の違いによって多様な表現方法があります。

織物は経糸と緯糸を織り上げるという技法上の制約が大きく、表現の自由度が
限られますが、その点使用する糸の色だしに工夫を凝らしたり、色と色の
組み合わせ、柄の織り出し方に作者が苦心を重ねている様子が、作品に見受け
られます。

他方染の作品は、基本的に白地の生地に柄を染め上げるので、手描き友禅、
型染、絞り染の別で自由度の違いはありますが、織物に比べて表現の幅は
かなり広がります。作者は与えられた自由さの中で、個性を発揮することも求め
られます。

そのような前提で今展を観て行くと、織物の作品には海老瀬順子の文部科学
大臣賞受賞作、穀織着物「海に聞く」に代表されるように、技法上の制約の中で
工夫を重ね、感性を磨いて、現代性をも有する完成されたものが多く見受け
られるように感じました。

ところが染色の作品では、特に友禅で柄や色に同じような手法を使った、
似通った表現のものが目立つように感じました。勿論時代の好みというものは
確かに有り、作品がそれを求める人々の要望に添う必要がある以上、傾向が
似通ることはある程度は已むおえないかも知れません。しかし友禅は表現の
自由度が高いだけに、もっと多様な個性が出てもいいと感じました。

伝統を守りながら、同時に現代性、独創性を追求することの難しさを、まざまざと
見る思いもしました。

0 件のコメント:

コメントを投稿