2016年8月14日日曜日

京都市美術館「光紡ぐ肌のルノワール展」を観て

春のこの時期、京都市美術館で好一対の美術展が開催されています。モネ展と
ルノワール展です。周知のように2人は印象派の代表的な画家として、我が国でも
人気があります。

私はもち論両方観るつもりで、しかし一日で観るのは少々きついと考えて、まず
モネ展、それから日を隔てた休日にルノワール展を訪れました。

本展はルノワール特有の透き通った女性の肌、健康的な唇と頬の輝きに焦点を
当てた、60点ほどの作品で構成される展覧会で、モネ展と比較するとこじんまり
していますが、彼の絵画の特色がよく示された、好ましい展観となっています。

今回の両展を比べると、同じ印象派の旗手の共通点と違いが見えて来るように
感じます。おおざっぱに分けると、光への共通の関心と興味を持つ絵の対象の
違い、と言えましょうか。

絵画の対象の違いは、モネが終生風景画に打ち込み、ルノワールが一貫して
女性像を描き続けたことからも明らかです。両展を観ても、モネが晩年には
自ら好みの庭園を造り上げてその情景を描くという、風景画への徹底した
こだわりと、対してルノワールの繰り返される飽くなき女性美の探求に、各々
画家の情熱と執念を看取らされます。

共通点について見てみると、光り輝く対象の表現に興味を持った二人が、特に
初期の印象派展の頃には、文字通り描く対象は違えど、光に満たされた画面を
現出させる喜びに打ち震えるように、競って華麗な色彩に溢れた絵画を描き、
それから次第に、光によって演出される対象の量感や光の移ろい、揺らぎに
関心が移って行ったことが了解出来ます。

さてこのルノワール展の出品作で、私は同じ人物像でも作品に二つの傾向が
あることに気づきました。一つは、一人の子供、女性の愛らしさ、美しさを描く絵、
もう一つは、複数の人物を配して、場の雰囲気の好ましさを描く絵画です。

私には特に今展では、後者の場の雰囲気を描く作品に、印象に残るものが
多くありました。殊に日本初公開の「昼食後」は、若い女性の夢見るような
佇まいと、煙草に火を点けようとする男性の満ち足りた様子が、いかにも
輝かしく幸福な雰囲気を演出しています。観る者の心も思わず浮き立たせる、
好感の持てる作品でした。             
                                      4月10日記

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