2014年3月20日木曜日

三谷博著「愛国・革命・民主」を読んで

我が国の明治維新が、世界的に見ても人的被害が少なく、スムーズに
封建体制から近代的体制への転換を成し遂げた革命であることを
論述し、その成果の今日の国際社会への応用の可能性を探る、刺激的な
書です。

私には、論の進め方になれぬ部分もあって、果たして著者の示そうとする
全体像のどこまでを理解できたか、おぼつかないところもありますが、
部分部分においては、私が明治維新というものに対していだいていた
固定観念を大きく覆されるところがあって、蒙を開かれる思いがしました。

一番印象に残ったのは、明治維新が王政復古というキーワードによって、
外国から真の革命とみなされにくい、という現実への著者の反論を記した
部分で、今日の世界の常識では、復古、いわゆる過去にさかのぼるという
概念で使われる言葉が、維新の場合、何の資料も情報もない遠い過去を
目標としたために、抵抗感なく自由な改革が可能だったという指摘です。

江戸幕藩体制の頃の我が国には、より良い未来を目標にして時代を
変革するという考え方は、思いも及ばないものだった。それゆえ、想像
出来ない過去にさかのぼることが、すなわち革新的なことだったのです。

時代時代によって、現代の私たちでは想像も及ばない価値観や考え方が
存在する。そのような事実にも想像力を働かせることが、歴史的事象を
顧みるとき、私たちにも求められているのではないでしょうか。

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