2020年5月11日月曜日

「伊藤亜紗の利他学事始め 不安を救ってくれた言葉」を読んで

2020年4月23日付け朝日新聞朝刊、「伊藤亜紗の利他学事始め」では
「不安を救ってくれた言葉」と題して、美学者の筆者が、障害や病を持った友人たちと
ウェブ会議システムを使って「オンライン飲み会」を開催した時、現在のコロナ禍に
席巻されて身動きの取れない世界について、参加者の一人が「いま世界中の人が
障害者になっている」と答えたことに、説得力のあるものを感じた、と記しています。

つまり、「人と間近に関わることを禁じられているこの状況は、全員が「接触障害者」
になっているとも言える。接触不可という制約を抱えたまま社会的活動を維持しよう
とする姿は、失明した人が、視覚を使わないで世界を認識する方法を獲得する過程
のようだ。」と言うのです。そして、障害を持つ人の体験から生み出された確かなこの
言葉に、救われる思いがしたと記しています。

私はこのエッセイに、目を開かれるものを感じて、感銘を受けました。確かに私たち
が今直面しているこの事態は、かつて全く経験したことのないものであり、しかも
ウイルスというその相手が目には見えず、触れることも出来ず、しかし現実にどこか
に感染者がいて、自分も感染するリスクがある、という雲をつかむようで不安だけが
募り、各々が従来の基準からは社会的に孤立することを求められる、感染症の蔓延
独特の陰鬱な空気感を持ち、しかもそれがいつ終息するとも分からない、漠然とした
理不尽さを伴うものであるからです。

このような、私たちが今まで当たり前に享受していた心身の自由が突然に奪われて、
どう対処していいのか戸惑い、途方に暮れている時に、自らに課された制限を長い
時間をかけて自力で乗り越えて来た障害を持つ人々が経験を語ることが、励まし、
力を与えてくれるということに、接触は出来ない時ども、多様な社会ならではの絆の
存在を、感じる思いがしたからです。

これから、このコロナウイルス感染症との戦いが、いつまで続くとも分からない状況
の中で、我々が社会的絆を保つ秘訣の一つとして、SNSなどを使って多様な人々が
ポジティブにつながることの必要性を、改めて感じました。

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