2019年12月16日月曜日

書店・誠光社「大﨑真理子作品展」を観て

先日、京都市上京区の書店・誠光社で、大﨑真理子という23歳で急逝した画家の
作品展を観て来ました。

彼女は、高知県出身で京都市立芸術大学に入学、美術学部美術学科油画専攻
の卒業制作で市長賞を受賞、首席で同大学院に進学し、1年後同タイトルの2つの
作品を制作し、1点は京都の企業が買い上げ、もう1点を芸大の作品展に出品した
直後に、不慮の死を遂げたそうです。

私は新聞で彼女の作品展を紹介する記事を読んで、早速その書店を訪れました。
あまり広くはない店のカウンター前の奥まったスペースに、上記の彼女の遺作の
「あの日のユンボ」というタイトルの絵画が1点、その他にはその作品のための習作
が数点展示してあるだけの、ささやかな展覧会でした。

その絵画は、鮮やかな黄色が印象的な、菜の花の向こうに佇むユンボ(建設用の
パワーシャベル)を中心として、周囲を取り囲む草の緑、白い雲と溶け合う青い空、
地面の灰色が一体となって、一つのハーモニーを奏でるような美しい絵で、作者が
夭折したという事前の知識もあって、私には、何とはなしに寂しさが漂う風にも見え
ました。

作品展では、彼女の芸大での絵画の指導者であった法貴信也教授が、彼女が
この絵画を完成させるまでの工程を見守った記録を事細かにに記した、小冊子が
販売されていて、私はそれを買って帰って、読みました。

その小冊子には、彼女が大学院に進学後しばらく絵筆をとることが出来なかった
こと、ある日河原で、同系の黄色の菜の花とユンボの取り合わせを見かけて、この
情景を描きたくなったこと、その想いを表現するために、絵筆やキャンバス、絵具や
描法の選択に試行錯誤を重ね、習作も多数制作して、8か月の歳月を費やしてやっ
と、2点の作品を完成させたこと、が記されていました。

将来を嘱望される新進画家であった彼女が、才能を育むための指導者にも恵まれ
ながら、突如としてその人生が断ち切られた運命の非情について、改めて考えさせ
られました。

0 件のコメント:

コメントを投稿