2018年1月5日金曜日

新海誠監督「君の名は」を観て

以前から観たいと思っていた、2016年制作の大ヒットアニメーション映画「君の名は」が、
テレビ地上波で初公開されるということで、早速観ることにしました。

期待通りなかなかの感動作で、何回も観たという人が私の周囲にも数人いることからも
分かるように、ラストシーンが深い余韻を湛え、心に残る映画でした。

まず第一に映像が素晴らしいと感じました。彗星が流れる天空の荘厳で、神秘的な
光輝を放ちながらも、どこかはかなさを感じさせる美しさ。主人公の一人、少女三葉が
暮らす飛騨の神社の神域である、山中のかつての隕石の衝突の痕跡と思しき場所の
場景の雄大さ、一面の緑に包まれた美しさ。

これらの情景描写が物語に幻想的な雰囲気を与える一方、映画を観る者をも物語の
世界に包み込むような一体感を現出させるように感じました。私には、宮沢賢治の
『銀河鉄道の夜』の作品世界に通じる感興が、心に浮かびました。

さて、東京に暮らすもう一人の主人公、少年瀧と三葉の心が入れ替わるストーリー
には、三葉が神社の神主の祖母と作る組紐が深く関わっています。伝統的な手芸品で
ある組紐が、人の手によって丹念に糸を絡めながら作られるように、主人公二人の
関係は入れ替わり、立ち替わり、時には時間さえさかのぼって醸成されます。

それは現実の世界では実際にはあり得ないことではあるけれど、もし人の心の認識と
いうものが、脳内では現実と記憶が入り混じって形成されるものであるならば、
あるいは、民話や伝承の世界が確かに存在し、また運命的な出来事や奇跡が現実に
起こると信じることが可能なら、この物語は説得力のあるリアリティーを持っていると、
感じることが出来るはずです。

そして新海監督が創り出す映像とストーリーは、この映画の中でそれを生み出すことに
成功しているのです。

映画のラストで、それまで互いを求めながらも、直接に巡り合うことが叶わなかった瀧と
三葉がとうとう出合った時、それをハラハラしながら見守っていた私たちも、二人の
運命的な絆を信じ切ることが出来た安堵によって、深い感動に包まれたのではないで
しょうか。

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