2018年1月24日水曜日

ロームシアター京都「文化庁メディア芸術祭京都展【ゴースト】」を観て

アート、エンターテインメント、アニメ、漫画の創造と発展を目指すという「文化庁
メディア芸術祭京都展」を観に、ロームシアター京都へ行きました。今展は「ゴースト」
をテーマに、目に見えないものが喚起する想像力を巡って、気鋭の作家によるメディア
アート17作品が展示されています。

同祭は20回目ということですが、私が観に行くのは初めてで、当初最新の機器を駆使
した表現手法が普通の美術展とは勝手が違うように感じられて、どのように作品に向き
合うべきか少し戸惑いを覚えてしまいました。

しかしすぐに一般の現代美術の展覧会と同じように、作品から自分が身体全体で感じる
ままに感じ取ればいいのだと思い直して作品に向き合うと、すんなりとその作品と交感
することが出来るように感じました。

個別の作品ではまず、ロームシアターB2Fノースホール『身体のない 《演劇》の空間』
に設置された高嶺格 「歓迎されざる者」、照明を落とした簡素な演劇の舞台のように
設えられたホールの中央に椅子が一脚置かれ、透明感のある白いドレスをまとった
女性が腰かけて静かに金子光晴の詩を朗読しています。

なかなかいい雰囲気を醸していますが、さてこの作品は何を訴えかけているのかと考え
ながら導かれるままにホールを見下ろす上階桟敷に上がると、そこにはモニターが2つ
据え付けられて、1つの画面には波にたゆたう古ぼけた木造船に階下で朗読する女性が
合成された画像、もう1つの画面には木造船だけがたゆたう姿が映し出されて、この
パフォーマンスが現在の社会情況の中で、私たちが感じているどうしようもないもやもや
を表現していることに気づかされます。

2F共通ロビー『ぽっかり広がった異界への入り口』では和田永「時折織成-Weaving
Records-」、透明の箱状のケースの上にオーディオ用のオープンデッキが設置されて、
デッキから下のケースにテープが延べ落とされてて行くと、そのテープがランダムで
美しいウエーブした模様を作り出し、それが巻き戻される時にはテープに録音された
荘厳なクラッシック音楽が響き、またテープが延べられて行くということを繰り返す
作品です。

テープの作り出す波形がその都度違う形を描き出し、一方音楽が流れると全てが
元に戻り、最近一般家庭では見かけなくなったオープンデッキのテープレコーダー
への郷愁を誘われる作品です。

0 件のコメント:

コメントを投稿