2015年8月27日木曜日

漱石「それから」における、平岡宅へ使いに遣った門野の返事を聞く代助

2015年8月26日付け朝日新聞朝刊、夏目漱石「それから」106年ぶり連載
(第百二回)に、手紙を送ったにも拘わらずなかなか返事をよこさない平岡に、
とうとうしびれを切らした代助が、その催促に遣わした門野の報告を聞いて、
感じた心の内を記する、次の文章があります。

 「代助は少し安心した。
  「何だい。病気は」
  「つい聞き落しましたがな」
 二人の問答はそれで絶えた。門野は暗い廊下を引き返して、自分の部屋へ
這入った。静かに聞いていると、しばらくして、洋燈の蓋をホヤに打つける
音がした。門野は灯火を点けたと見えた。
 代助は夜の中になお凝としていた。凝としていながら、胸がわくわくした。
握っている肱掛に、手から膏が出た。」

代助はどうして、わくわくしたのでしょうか?この記述だけでは、推測し兼ね
ます。

あえて想像を巡らせると、前途の困難さが増して、武者震いしたのか?
あるいは、三千代が平岡との関係を清算しやすいように、病気を装っている
と考えたのか?もしそうであるなら、彼女が自分の勇敢な行動を後押しして
くれていると、代助は感じたのかもしれません。

あくまで私の手前勝手な憶測ですが、はたせるかな、この時点での情報が
乏しいだけに、クライマックスへと向けた緊張感は、益々高まります。

0 件のコメント:

コメントを投稿