2015年8月17日月曜日

細見美術館「琳派四百年古今展 細見コレクションと京の現代美術作家」を観て

琳派四百年に因み、京都縁の3人の現代美術作家、名和晃平、山本太郎、
近藤高広が、美術館コレクションから自ら選んだ作品をモチーフとして
それぞれの作品を制作、コレクション作品の「古」と現代美術作品の「今」の
競演を楽しむ趣向の展覧会です。

まず細見美術館は岡崎の文化ゾーンに位置し、大阪の実業家細見家の
個人コレクションの保存、展示という目的から出発した、瀟洒な佇まいの
こじんまりした美術館で、私が実際に中に入るのは今回が初めてでした。

入館料を払うと小さなシール状のチケットが手渡され、洋服の胸の部分
など見えるところに貼り付けて入場するという手順が、堅苦しくなくて、
何とも微笑ましく感じられました。

展示室は地下に設けられ、それぞれが個別のスペースとして独立していて、
第1展示室を出ると下方に向かう階段を降りて第2展示室に入り、またそこを
出ると階段を下って第3展示室に至るというふうに、最下部にある吹き抜けの
地下のカフェの側面を下降しながら辿るように配置されています。何か
秘密のスペースに潜り込むような、あるいは色々な趣向の茶席を巡るような、
独特の趣があります。

さて展示作品について触れると、第1展示室、名和晃平の担当コーナーでは、
細見コレクション「金銅春日神鹿御正体」(重文)と、名和作品「PixCell・Bam
bi#14」との比較が味わいがありました。南北朝時代に制作され、古色を
まとったどっしりとした鹿の姿の銅製の神像と、全身に泡のような透明の
球体をまとわりつかせた生身に近い小鹿の像。時の流れや、時代、時代の
空気、人びとの感性の相違まで示してくれるようで、深い余韻が残りました。

第3展示室、近藤高広のコーナーでは、細見コレクションの織部、志野の
名物茶碗と、近藤作「銀滴碗」の並立が目を引きました。交互の比較が、
それぞれの茶器の名品としての存在感を際立たせ、今だかつてなかった
時代を超えた取り合わせの妙に、美術品を観ることの新たな幸福感を
味わいました。

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