2025年3月1日土曜日
ソロー著「ウォールデン 森の生活」を読んで
アメリカの近代人による、アウトドアライフの思想の原点と言って良い作品です。かねてより難解という風評
があって、読みあぐねていましたが、思い切って読むことにしました。
まず感じたのは、確固たる信念に基づく書であるということです。というのは、本書が著された時代アメリカ
では、プロテスタンティズムが資本主義と強く結びついて、勤勉な経済活動が国民の義務と強固に意識されて
いた中で、ハーバード大学卒業という、当時の選ばれた知的エリートであるソローが、森の中で生産性のない
生活を営むという行為が、背徳的であると見なされたことは想像に難くなく、余程の決意がなければ、この
ような生活を決行出来なかったと思われるからです。
事実一部の友人を除いて大多数の周囲の人々が、彼に好奇と非難がましい目を向けているように感じられます。
しかし彼には、このような自然に融け込んだ生活こそが、人間本来の暮らしであるという堅固な信念があって、
この生活から得られる満足と喜びを、独特の詩的な文体で書き綴ったのです。
その文章は、自然現象や樹木、草花、野生の小動物にたいする愛に溢れ、そのような描写の部分は、読むだけ
で幸福な気分になります。しかもただ単なる詳細な情景や観察の描写ではなくて、科学的知識や洞察に裏打ち
された記述なので、その表現には的確さがあり、読者に対して強い説得力を持ちます。このような特徴が、
以降のアウトドアライフの思想的原点となり得た所以でしょう。
また私が本書に好感を持ったのは、ソローが猟師や木こり、そしてアメリカインディアンなど、無学で社会的
地位が低く、当時上流階級の人々から差別的な視線を向けられていた人たちの中に、野生の生活力という美点
を見出していたことであり、彼らの有するこの能力を敬愛していたことです。そこには、ソローの本質を見抜
く確かな目が感じられます。
本書が著されてから約170年の年月が過ぎ去り、今日の視点から改めて見直すと、彼が訴えたことは、正に現代
社会の抱える切実な問題として、私たちの前に迫って来ます。その意味でも、長い年月が経過しても、決して
色あせない希有の思想書と言えるでしょう。
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