2019年3月26日火曜日

細見美術館「石本藤雄展ー琳派との対話ー」を観て

石本藤雄はフィンランドを代表するライフスタイルブランド「マリメッコ」で長くテキスタ
イルデザイナーとして活躍、現在は同じくフィンランドの老舗陶器メーカー「アラビア」で
陶芸家として活動するアーチストで、本展は彼の作品と細見美術館所蔵の琳派の
名品を競演させる、この美術館ならではのユニークな展覧会です。

私は恥ずかしながら国際的に活躍する石本の名を知らず、また「マリメッコ」に日本人
デザイナーが在籍したことさえも知らなかったので、本展の告知を目にして新鮮な驚き
を覚えました。

しかも江戸時代の渋い日本美術品の所蔵や展示で知られる細見美術館と、北欧の
モダンなデザインを象徴するような「マリメッコ」の取り合わせにも興味を惹かれ、
会場を訪れました。

まず、石本デザインのマリメッコ作品をこの落ち着いた美術館の環境で観て、私自身
の「マリメッコ」へのイメージも変わりました。これまでは、明るい色使いのあくまで陽気
で健康的なデザインというイメージが先行していましたが、石本のデザインの作品が
示すように、自然の観照や内省的な要素が含まれることに、気づかされた思いがしま
した。

また石本の日本の伝統に培われた美意識が、彼のデザイン作品の基礎となっている
こととも勿論関わっていると思われますが、現代的な北欧のマリメッコ作品が琳派の
美術品と違和感なく並び立ち、互いを引き立てることにも驚かされました。

琳派の美術品にも装飾的デザイン性という要素があり、それぞれのそういう部分が
共鳴し合うのか、洋の東西の相違、制作年代の違いという時空を超えて、華やかな
宴のただ中に迷い込んだような思いがしました。

新しい試みとしても、とても刺激的な展覧会でした。

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