2019年3月20日水曜日

上田慎一郎監督映画「カメラを止めるな」を観て

昨年本格的に公開されて大きな話題を呼び、ヒットを重ねて、初長編監督作品で上田
監督が第42回日本アカデミー賞の最優秀編集賞を受賞した「カメラを止めるな」が、
テレビの地上波で初放映されたので、早速観てみました。

放映以前の日の予告や、当日放映前の監督、出演俳優の告知でも、最初の40分間
コマーシャルなしでノーカット放映されるので、そこで観るのを止めずにその後を楽しみ
にご覧下さい、という趣旨の発言が繰り返されていたので、観るにあたって余りに漠然
としてその意味するところが理解出来ず、映画の題名でもパロディー化しているのかと
いぶかりましたが、実際に観てみてすぐにその意味がわかりました。とにかく、最初の
40分が肝心。そこを注意して観て置くと、楽しめるのは間違いなしです!

映画の冒頭は37分のワンカット。ゾンビ映画の撮影現場で実際の撮影が進行して
いるはずが、迫真の演技を追求する監督が呼び寄せたのか、本物のゾンビが乱入
して、瞬く間にあたりは凄惨な修羅場に・・・。そんなシーンが続きますが、何かどこ
までが演技で、どこからがリアルか、判然としない微妙な違和感と共に、この37分間
が終わります。

そしてそこから始まるシーンで、この映画の撮影までの前日譚、撮影の舞台裏が次第
に明らかになり、観客は冒頭37分間の場面を思い起こしながら、そこに至る諸事情、
どのようにしてそのシーンが意図して撮影されたのか、あるいは図らずも現出した
のかを、自ずと知らされることになります。

つまり虚実入り混じった、ホラー映画のメイキング現場を追うメイキング映像とでもいう
ような手の込んだ入れ子状の映画で、俳優の個性にきめ細かく則し、計算し尽くされ
た脚本の上に、偶然も含めて彼らの熱演を最大限に引き出す演出の妙、その雰囲気を
損なわないために迫真性と同時にわざと稚拙さも垣間見せる、カメラワークの絶妙さが
マッチした、低予算でありながら映画愛に満ちた極上の娯楽作品であると、感じました。

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