2017年9月25日月曜日

二条城会場「アジア廻廊現代美術展」を観て

先日、「アジア廻廊現代美術展」京都芸術センター会場に行ったのに続いて、
二条城会場を訪れました。

こちらは二条城という文化的価値を持ち、幾つもの伝統的な庭園と建築物を有する、
広々とした会場を用いた現代美術の展観です。

まず目についたのは、チェ・ジョンファの大型バルーンの作品≪フルーツの木≫、
このいっぱいに様々なフルーツが生る木を模したバルーンが、普段は公開されて
いない二の丸御殿台所前の砂利敷きの地面に据え付けられ、ゆらゆらと揺れ
ながら佇みます。伝統的な空間の中でポップなオブジェが一見浮き上がるようで
いて、妙に馴染んで、独特の静かで非現実な空間を生み出しています。

次に台所内部に入り、数点の作品が展示されている中でまず視線を捉えたのは、
草間彌生の≪無限の網のうちに消滅するミロのビーナス≫、黒地に黄色で
網目模様を施したミロのビーナスの背景にも、同じ網目模様のパネルが設置されて
いて、草間にしては落ち着いた配色のビーナス像がパネルの中に溶け込むように
感じられたり、両者が呼応して明滅するように見えたり、引き込まれるような不思議な
感覚を味わわせてくれる作品でした。

度肝を抜かれたのは、キムスージャの作品≪遭遇ー鏡の女≫が全室に設置された
室内に入った時、床一面が鏡張りになっていて古色を帯びた天井板を映し込み、
それが深い奈落のように感じられて、その鏡面の上に足を踏み入れた途端、自分が
何処に立っているのか、あるいは深みに落ち込んでいくのか、まったく分からなく
なって、身体がぐらぐら揺れるような感覚に囚われました。屏風のように並べられた
連なる鏡も屈折した私自身や、周りの情景を映し出して、さらに感覚を混乱させます。
身体感覚を通して、自分とはなにかを問いかけられるような作品でした。

最後に二条城本丸の内堀の水面にガラスのオブジェが浮かぶ三嶋りつ恵の≪光は
いつでもそこにある≫という作品、この作品は文句なく風景と響き合って美しく、
オブジェを設置することによって場の魅力を引き立てるという、私にとっての現代美術
を観る上での新しい感覚を味わわせてくれました。

一風変わった、味わいのある美術展でした。

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