2025年4月14日付け朝日新聞朝刊、「鷲田清一折々のことば」3380では
俳人正岡子規の短歌集『子規歌集』から、次の言葉が取り上げられています。
夢さめて先ず開き見る新聞の予報に晴れ
とあるをよろこぶ
正岡子規が長い闘病生活を強いられたのは周知の事実なので、その俳人がこのような歌を
残したことには、簡単ではない意味があると感じられます。
その人の心を深い心労や心痛が支配している場合、人はなかなかささやかな喜びに、心を割
くゆとりがないと推測されます。
しかし子規は、毎日の天気のような、病床にある者にとってはほんの些事についても、喜び
を見出し、それをしみじみとした調子で、歌にしたのでしょう。そこには、俳人ならではの
豊かな感性と、心のゆとりを感じさせます。
現在の効率優先で、社会的な疎外感に囚われやすい世の中において、日常に追い立てられて
生活している私たちも、得てして身の回りの些細なことに、喜びや感動を見出せ難くなって
いるように思われます。
そのような自分の精神状態に、改めてきづかせてくれるという意味でも、この歌には、かけ
がえのない価値があると思われます。
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