2025年2月18日付け朝日新聞朝刊、「鷲田清一折々のことば」3342では
小説家川崎秋子による論考「人間と動物を分かつ壁の向こう側」(「アンジャリ」第44号)から、
次の言葉が取り上げられています。
人間の弱さと傲岸さは、けれどひとつの
武器でもある。
人間は集団で社会生活を行い、特に現代人は、色々な社会システムの庇護の許にあって、もし
単独で野生の世界に放り込まれたら、驚くほど無力な存在でしょう。
それに引き換え野生動物は、限られた環境に特化しているとはいえ、単独あるいは群れという
集団を構成していても、自らの生の目的を遂行するために、懸命果敢に個としての生き様を貫い
ているように感じられます。
客観的に見たら、後ろ向きに思い悩んだり、煩悩に囚われたり、あるいは優柔不断でもある人間
は、随分弱く、欠点の多い存在であるように思われます。
しかし人間の他の動物にない優れたところは、他者をおもんばかり、コミュニケーションを取っ
て、共同で生活環境(社会)を築き上げるところでしょう。つまり、個々の存在としての弱さ故に、
人間は言語を生み出し、文明を発展させて、現代の社会環境を生み出したのでしょう。
そのように考えると、弱さや欠点が転じて、繁栄に導いた、とも言えます。逆説はまた真なりと
言えるのでしょう。
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