2023年11月22日付け朝日新聞朝刊、「鷲田清一折々のことば」2917では
作家幸田文の随筆集『老いの身じたく』から、次の言葉が取り上げられています。
くろうとはどの道の人も、みなあと片付
けがうまい。
いけ花の先生の、花を生け終えた後の、的確な後始末を見て、この作家の感じた感慨だそう
です。
確かに私の体験でも、総じて腕の立つ職人の人は、立つ鳥は跡を濁さずとでもいうのか、
あと片付けがきれいで、上手だと思います。大工さん、植木屋さんなど。
逆に私が若い頃、家族の留守中に急に思い立って、家の台所で料理のまねごとをしたら、本人
は家族の帰宅後に喜んでもらえると高をくくっていたのに、台所が大変散らかっていると、
大目玉を食らった経験があります。正に自分の未熟さをさらけ出していたのでしょう。今
思い出すと、赤面ものです。
このことからも分かるように、プロの技は後始末も含めての技で、技の研鑽の基礎の根底に、
後始末があるのでしょう。だから技術の上達を焦って、いくら表面的な修練を積んでも、
片付け、整える心が育っていなければ、本当の意味での技の習得は出来ないのだと思います。
一つの仕事にきっちりときりを付けて、次の仕事に移る。そのような仕事上のメリハリも大切
だと思われますし、職人仕事に限らず、何か物事を行うときの心構えとしても、必要なこと
だと思います。
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