2021年3月12日金曜日
筒井淳也著「社会を知るためには」を読んで
私たちは常日頃、社会という言葉を何気なく頻繁に使っていますが、では一体社会とは
何かと問われると、明確な答えを見出せないように感じます。そのような想いもあって、
社会について分かりやすく解説してくれると思われる、本書を読んでみることにしまし
た。
しかし読み始めると、この本は社会とは何かを語ろうとするものではなく、社会という
ものの分からなさ、そして私たちは、その中でいかに振舞えばいいかを、指南しようと
する書であることに、すぐに気づかされました。でも結局、私が社会とは何かを理解し
たい訳は、そこでいかに生きたらよいかを知りたいためであるので、躊躇なく読み進め
ることにしました。
さて本書では、現代社会の分からなさの理由として、以下3点を挙げています。
①私たちが「専門知識」や「専門的な仕組み」に取り囲まれていること。これは社会が、
近代以降ますます分業化、専門化され、個々の人間は、自分の携わる仕事や専門分野の
限られた知識はありますが、そこから少しずれると分からない世界が広がっており、
それをことごとく理解することは、到底不可能であるということです。
②専門的な知識やそれを活かした仕組みが、周囲から独立して存在している訳ではない。
おまけに、それぞれの専門的な知識や仕組みは、個々に存在しているのではなく、複雑
に絡み合って社会を成り立たせており、社会そのものをますます理解できないものに
しています。
③私たちはいつの間にか、専門的な知識や仕組みが絡み合って動き続けている、この
乗り物に乗って生活している。更に、社会は絶え間なく動き続けており、私たちはそれ
を理解しようとしても外部から俯瞰することは不可能で、正にその渦中から認識しよう
とすることしか出来ません。また、それぞれの仕組みのつながりが緩やかで、場合に
よっては色々な可能性が存在することも、社会に対する厳正な理解を妨げています。
そしてこの複雑な社会で暮らしていくためには、①人々は安定した基盤がないと、変化
に踏み出すことさえ出来ない。安定と変化は、両立させないといけない。②失敗した
人たちを非難する際には、その人が置かれていた状況を出来る限り、理解しようとして
からにするべき、と語っています。
つまり、バランス感覚と柔軟性、寛容の精神と冷静な分析が、必要ということでしょう
か?社会学者による科学的知見と学術的方法による考察ゆえ、一般的な処世訓とは一味
違う、人生指南になっていると、感じました。
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