2023年4月13日付け朝日新聞朝刊、「鷲田清一折々のことば」2702では
我が国を代表する音楽評論家・吉田秀和の随想集『文学の時』から、次のことばが取り上げられ
ています。
芸術は生活を飾る花、余裕があってはじめて
生まれるものと考えている人が多いけれど、そ
れは逆。芸術は生活の根なのです。
1989年のベルリンの壁崩壊後の、東欧世界の変化を見守りながらの吉田の感慨です。
確かに、ソ連をはじめとする東欧圏では、クラシック音楽やバレーは国家の手厚い庇護の下に
隆盛を極めたけれど、文学など思想が絡む分野においては、体制に反逆するものにしか、優れた
仕事は生まれなかったように感じます。
つまりビビットに現在を映す分野において、芸術は切実に生活に根差すものなのでしょう。
今ベルリンの壁崩壊後の東欧世界の行く末として、ロシアによるウクライナ侵攻が行われていま
すが、この惨劇の後にどのような世界が生まれ、優れた芸術が生み出されるのか、この戦争の
早期終結を祈りながらも、来るべき世界の指針を示す芸術の誕生に、大いに期待しています。
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