2023年3月28日付け朝日新聞朝刊、「鷲田清一折々のことば」2686では
幕末に活躍した旧幕臣・勝海舟の、明治29年に各地で起きた津波や洪水にふれて語った『氷川
清話』から、次のことばが取り上げられています。
昔の人は……人目に見えるやうなところに頓
着しない。その代わりに誰にも見えない地底へ、
イクラ力を籠めたか知れないよ。
これは、堤防を造るにしても、とにかく地下を深く掘り下げ、固めてから始めたし、炊き出し
用にお蔵米をしかと準備し、急場の治療の体制を整え、いざとなれば年貢も寛めた、ということ
のようです。
確かに大きな被害をもたらす地震等自然災害が各地に頻発し、防災の必要性が強く叫ばれる今日
においても、天気の観測、震災予知の技術は江戸時代に比べて格段に進歩したとはいえ、実際の
災害への備えという意味では、ついつい経済的効率を優先して、結果として十分な準備が出来て
いないように感じられます。
これは、目まぐるしく社会情勢が変化する現代社会において、またいつどこで起こるか分から
ない災害への備えということで、なかなか充実した災害対策が取りにくいというジレンマもあり
ますが、昔の人の地に足の着いた防災感覚には、学ぶべきことがあると思います。
更には防災に限らず、社会活動の色々な部分において、うわべだけではなく、基本的なところ
から物事を構築する姿勢も、大切でしょう。
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